【ふとんのお手入れ】様々なお手入れ方法の『出来ること』『出来ないこと』『リスク』を比較・解説してみました~

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気温も上がり、間もなく衣替えの季節ですね。冬の間に使ったふとんも押し入れにしまう時期が近づいてきました。ふとんお手入れの季節が本格到来します。

例年5月から10月にかけて、当店ではかなりの数のふとんのお手入れの相談を受けたり、ふとんのお手入れを預ります。

そもそもふとんのお手入れがなぜ必要なのでしょうか?

1.ふとんのお手入れが必要な3つの理由

ふとんのお手入れが必要な理由を挙げると大きく以下の3つとなります。

理由その① 湿気

湿気はふとんの大敵。湿気はカビの原因となるだけでなく、ジメジメして寝心地が悪いという原因となります。しかしながらふとんの素材によって湿気のこもりやすさは異なり、また対処法も違ってきます。

理由その② 汚れ

人間は一晩のうちに、冬であってもコップ一杯の汗をかくと言われています。そして夏場にはその数倍に。そして汗の中には塩分など様々な汚れ成分が含まれています。そしてその積み重ねにより、長年使ったふとんには想像を上回る汚れが蓄積されます。

理由その③ ヘタリ

中年使ったふとんは中綿の体積の低下=ヘタりが生じます。ヘタリにより
掛けふとんの場合⇒保温性の低下
敷きふとんの場合⇒寝心地の劣化
が生じ、それによって睡眠の質の低下の原因となります。

ふとん=寝具とは、すなわち寝る時に使う道具ですから、私たちの眠りの土台となる大切なものです。やはりきっちりとお手入れされたものを使いたいものです。そのためには上質の寝具を選ぶのはもちろんですが、上記のような現象に対応して、定期的にお手入れすることが必要となります。

2.ふとんの特性や状態に合わせて最適なお手入れを

しかしながら世の中には、ふとんのお手入れに関して『間違った常識』や『間違ったマーケティングメッセージ』がたくさん出回っています。

やはりふとんのお手入れは、『ふとんの特性(素材によって異なります)』や『ふとんの状態』に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。そして様々なお手入れ方法には、それぞれ『出来ること』『出来ないこと』、さらにはお手入れすることによって生じる『デメリット』もあります。

ですから間違った方法でふとんをお手入れをすると
・期待したほどの効果がなかった
・かえってふとんを傷めてしまった
という事態も想定されます。

今回の記事では、いつもの通り正しいことを正しく伝えるスタンスで、様々なふとんのお手入れ方法を解説してみたいと思います。

3.お手入れ① カバーリング ~まずは大前提~

とにかくふとんにはカバーリングを掛けて使うこと。
そしてカバーリングを定期的に洗うこと。

当たり前の話ですが、カバーリングがまず何よりの大前提となります。

4.お手入れ② 天日干し ~湿気対策としてはかなり有効~

ふとんの大敵である、湿気対策として昔から最もポピュラーなお手入れ方法です。

湿気を含みやすい綿ふとんには必要不可欠なお手入れです。干さないで使い続けると綿ふとんはどんどん湿気を含み、ジメジメと嫌な寝心地になります。

一方天日干しした後の綿ふとんのふっくらした感じ、そして独特のにおいが好きと言う人も多いのではないでしょうか。綿ふとんに関しては天気の良い日に数時間の天日干しをする必要があります。

羽毛ふとんに関してですが『干さなくても良い』もしくは『干さない方が良い』と言われていたことがあります。しかしながら今となっては誤った俗説と言えるでしょう。

羽毛ふとんに関しては、中の羽毛の吹き出しを防ぐために側生地に『ダウンプルーフ加工』という生地の目つぶし加工が施されます。羽毛ふとんが出回り始めた当初は、ダウンプルーフ加工の技術が確立されていなかったため、側生地に樹脂を塗布することで代用していた時期があるとか。天日干しにより樹脂が劣化してしまうため『干さない方が良い』と言っていたという説があります。

やはり羽毛ふとんに関してもこまめに干した方が良いです。やはり使えば使うほど、中の羽毛も湿気を吸いダマになりやすくなります。こういった湿気を定期的に発散した方が、中の羽毛がダマになりにくく、ヘタリにくいので、羽毛のかさが維持されます。

羽毛に関しては、綿わたよりも放湿性が高いため、天気の良い日のお昼前後に1時間程度の天日干しで十分です。また羽毛ふとんの側生地はデリケートなので、傷めたりしないようカバーリングを掛けたまま干すことをお勧めします。

紫外線でふとんの表面を殺菌する効果もありますが、ダニに対する効果はほとんど期待できません。一方屋外に晒すことで、花粉やPM2.5といった異物がふとんに付着するのは気がかりな点です。

また干すことで取り除く事が出来るのは湿気だけであり、汚れは一切取り除くことができません

別の言い方をすれば10年間の使用で、天日干しだけしかしていないふとんにはかなりの汚れが蓄積されています。

5.お手入れ③ ふとんクリーナー ~近年注目度大幅アップも過信は禁物~

ふとんクリーナーでふとん表面の汚れをこまめに取り除くのはとても良いことです。天日干し+ふとんクリーナーという組み合わせは、ご家庭で出来るお手入れとしては悪くないやり方だと思います。

しかしながら『もう、ふとんは干さなくても大丈夫』というキャッチコピーはインパクトありますが、ふとん掃除機で取り除くことが出来るのは、表面のホコリなどだけ。汗の(水溶)成分の汚れや湿気などには効果がありませんので、これは誇大広告としか言いようがありません。(インパクトさえあればそれがウソでもOKといった販促手法はいかがなものだと思います。)

天日干し+ふとんクリーナーだけで10年間ふとんを使い続けると、汗由来の水溶性の汚れはふとんの内部だけでなく、表面にもどんどん蓄積されていきます。例えば下の画像のような汚れに対して、天日干し+ふとんクリーナーだけでは全く無効であることは一目瞭然ですよね。

6.お手入れ④ コインランドリー ~緊急時以外にはお勧めしません~

ふとんの汚れの大部分は、汗に含まれる水溶成分です。これを取り除くために最も有効なのが『水洗い』です。

『ドライクリーニング』の場合、石油系の溶剤で洗うため水溶性の汚れを取り除くには必ずしも適していません。ふとんの表層部はきれいになりますが、水溶性の汚れをふとん中綿の内部に押し込む格好になってしまいます。

さて水洗いと言っても、ご家庭の洗濯機ではサイズ的にふとんを洗うことは無理です。そこで『コインランドリー』ということになります。

私も実験の意味で羽毛ふとんをコインランドリーで洗ったことがあります。その結果意外なほど乾燥に時間と追加料金が掛かりました。

乾燥が不十分だと中の羽毛のかさが復元せず、ふとんがペチャっとしたままです。また羽毛ふとんの側生地はデリケートなため、タンブラー乾燥はお勧めできません。いきなり生地が破れたりすることはめったにないかもしれませんが、羽毛ふとんの寿命を縮めてしまうと思います。

また綿わたのふとんの場合、コインランドリーで洗うと、かなりの確率で中綿が偏ってしまいます。綿が偏ってしまうとどうにもなりません。打ち直しでほぐし直すしか対処方法がありませんので、くれぐれもお気を付けください。

上記のような理由から、コインランドリーは緊急以外にはお勧めしません。特に高額な羽毛ふとん、綿ふとんなどの場合は絶対に避けた方が良いと思います。

その一方で、お年寄りを介護していて、頻繁に汚してしまう。その都度業者に出して洗えない、やはりコインランドリーで・・・という方もいらっしゃると思います。こういった場合、使うふとんの素材を水洗いと相性の良い『ポリエステル』にすると良いでしょう。ただし『保温性』や『ドレープ性(肌沿い)』はあまり高くはありませんが・・・

7.お手入れ⑤ 水洗いクリーニング

先ほど申し上げた通り、ふとん汚れの最大の要因である汗。その汗に含まれる水溶性の成分を取り除くのに、最も適しているのは『水洗いクリーニング』です。コインランドリーとの最大の違いは、ふとん専用の大型機械で専門の担当者が洗浄・乾燥を行う点にあります。乾燥に関してもタンブラー式ではなく、ベルココンベアー式の平面のタイプが一般的です。

通常レベルの『汚れ』や『におい』は水洗いクリーニングでキレイさっぱり取り除けます。

しかしながら『激しい汚れ』や『脂シミ』は完全に取り除くことが出来ません。裏を返せばそういったレベルの汚れになる前に、4~5年に1回の水洗いクリーニングを推奨しています。

他社のインターネットサイトなどを見ると『水洗いでかさ高復元』的な訴求の仕方を見かけたりしますが、水洗いによるかさ高回復効果は限定的なものに過ぎません。誇大広告と言えるでしょう。

水洗いによるデメリットとしては、長年使った羽毛ふとんの場合、生地の劣化により破れてしまったり、あるいは破れないまでもさらに劣化してしまい、中の羽毛の吹き出しが増大してしまうことが想定されます。そういった場合、水洗いクリーニングをお断りしたり、あるいは仕立て直し(羽毛ふとんリフォーム)をご提案する場合があります。

8.お手入れ⑥ 仕立て直し(綿ふとん打ち直し、羽毛ふとんリフォーム) ~まるで新品同様、最強のお手入れ~

仕立て直しとはすなわち、現在使っているふとんの中綿を再生して、新しい側生地で仕立て直しをすること。

綿ふとんの場合『打ち直し』
羽毛ふとんの場合『リフォーム』
と一般的に称されます。

綿ふとん打ち直し、羽毛ふとんリフォーム共に、新しく買うのと比べて半額から3分の2程度の費用で、新品同様に生まれ変わります。

まとめ

おふとんのお手入れに関しては下記のことはしっておいていただきたいと思います。

①まずは日常のお手入が基本
②しかしながらご家庭でのお手入れには限界がある

③ふとんの素材、ふとんの状態に合わせた最適なお手入れを選択する
④それぞれのふとんのお手入れで出来る事、出来ない事、リスクを理解する

⑤必要に応じてプロ(業者)に相談する、任せる

あなたの大切な眠りのために、ふとんのお手入れはプロにご相談ください。


↑快眠寝具専門店ふとんのせいぶ(西部製綿株式会社)HPへのリンク(外部リンク)↑

 

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自称『日本一文章を書くのが好きな寝具店社長』

かつてはカネボウで化粧品研究員をしていました(口紅やマスカラの処方開発担当)。現在は縁あって(婿養子)香川県で快眠寝具専門店『西部製綿株式会社』の社長をしています。自称『日本一文章を書くのが好きな寝具店社長』です。広島県出身の熱狂的カープファン。現在53歳ですが、6歳と3歳の男の子のおっさんパパ。しばらくは『寝具』のことだけでなく『子育て』ネタも書くかも(笑)もと研究員だけあって若干理屈っぽいかもしれませんが、出来るだけ読みやすい文章を心がけています。
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