【マットレス】スプリングマットレスの廃棄に関する個人的所感
- 目次
1・廃棄する際の“環境配慮”が当たり前の時代
2.スプリングマットレスの廃棄ー香川県観音寺市の場合ー
3.自治体によって対応は様々
4.使用者が廃棄のコストを負担するべきなのでは?
5.廃棄に関するノンスプリングマットレスの優位性
6.スプリングマットレスにもっと工夫が必要なのでは?
7.製造者、使用者そして販売者の社会的責任
1.廃棄する際の“環境配慮”が当たり前の時代
私が小学生の頃(昭和50年代前半)ごみを廃棄する際に“分別“などする必要がなかったように記憶しています。確か燃えるゴミや、缶ゴミ、プラゴミなど一まとめに“ゴミの日”に捨てていたはず。でも捨てるのは楽でしたが、あのゴミは一体どのように処分されていたのでしょうね?
最近はモノの廃棄やリサイクルに関して様々なルールや規制があります。これもひとえに『地球環境を守るため』この一言につきます。
ゴミの分別方法も自治体ごとにかなり細かいルールが決められています。
またテレビや洗濯機など家電製品では廃棄の際にはリサイクル料が発生しますし、 自動車に関しては(新車の場合)購入時にあらかじめリサイクル料を払うシステムになっています。
ところがベッドマットレスに関しては統一の規制やルールがなく、自治体によって対応が様々というのが現状です。
2.スプリングマットレスの廃棄-香川県観音寺市の場合ー
ちなみに私が住んでいる香川県の観音寺市では、原則スプリングマットレスは
・側生地などの繊維部分
・金属スプリング部分
に分別して持ち込んだ場合に限り、軽トラ1車510円(個人の場合、200㎏まで)という料金で引き取ってもらえます。
ただこの分別というのが非常に厄介な作業でして、かなりの労力と時間が掛かります。いわゆる(連結型の)ボンネルコイルでも数十分掛かります。( 独立式の)ポケットコイルの場合一つ一つのコイルが不織布に包まれているので、まともにやると数時間かかってしまいます。
はっきり言って“うんざり”するほどの手間ですが、分別をしてから持ち込まないと観音寺市の処分場は引き取ってくれません。ただし、これは決して観音寺市を批判しているのではなく、後述する通り『そうあるべきだ』と私は考えています。
3.自治体によって対応は様々
金属スプリングのマットレスを民間の業者に出した場合、地域や業者によって異なりますが、1台あたり数千円~1万円の費用が掛かるようです。引き取った処分業者は徴収した費用の中から人件費をかけて、そのマットレスを分別しているということになります。
ちなみに当社の場合、近くの民間業者に持ち込むと、
シングル、セミダブル 4,320円
ダブル、クイーン 5,400円
という引き取り処分料になっています。
当店で買い替えの際、つまりベッドマットレスをご購入頂いたお客様の古いベッドマットレスを引き取る際には、上記の金額だけ客様から頂戴し、そっくりそのまま民間業者に支払うという形で、引き取り処分を代行しています(ただし、これは買い替えの場合のサービスであり、マットレスの引き取り・処分の代行のみは承っておりません)
要するにスプリングマットレスの分別に関しては、
『手間と時間をかけて自分でやる』か、
『お金を払って業者にやってもらう』の二者択一ということになります。
ところが、自治体によっては『スプリングマットレスの引き取り無料』というところが意外と多いのです。 全国各地の同業者にいろいろと聞いてみたところ、無料で引き取っている自治体がまだまだあるようです。ちなみにお隣の愛媛県四国中央市に関しては、今でも無料のようです。
『そりゃうらやましい話だ』・・・と言いたいところですが、物事はそう単純なものではありません。そういった自治体は『無料で引き取ったスプリングのマットレスをどう扱っているの?』という問題がそこには残ります。
4.使用者が廃棄のコストを負担するべきなのでは?
考えられる可能性としては、
1)どこかに埋めている?
一番てっとり早い方法ですが、 大量生産・大量廃棄の高度経済成長の時代ならいざ知らず、さすがに今どきこのようなやり方をしているところはないと思います。
となると
2)自治体の職員がやる、もしくは自治体が業者に出す
誰かが分別しないといけないワケで、職員がやるにせよ、業者に出すにせよ、その費用(人件費)は税金でまかなわれているということになります。本来であれば使用者(捨てた人)が負担するべきものを、税金から負担されるのは逆の意味で不公平だと思います。
つまりスプリングマットレスを廃棄するためには
・どこかに埋める(もしくは不法投棄)
というのは論外として
・生活者が手間暇をかけて分別
・生活者が業者にお金を払って分別
・税金を投入して分別(結局生活者が費用を負担)
の3通りということになります。
どっちにしても自らの手間を掛けてやるか、もしくは直接的あるいは間接的な費用の負担という図式になります。ここらあたり家電製品や自動車のような、全国的な明確なルール・決め事があって然るべきと思うのは私だけでしょうか?
さらには製造者と使用者の責任も明確になって然るべきだと思います。(そのために無駄な税金が逆の意味の不公平に使われているのですから)やはり使用者が廃棄のコストを負担するのが原理原則ではないでしょうか。
5.廃棄に関するノンスプリングマットレスの優位性
そもそも世界的に見た場合、
日本とアメリカは『金属スプリング』のマットレスが主流ですが、
ドイツなどヨーロッパは『ノンスプリング』のマットレスが主流だそうです。
なぜヨーロッパでノンスプリングのマットレスが主流になったか?それは『ヨーロッパが環境先進国だから』という説明が一般的です。それを聞くと『なるほど』と思ってしまいますが、実はこれ因果関係において何の説明にもなっていないように思われます。ヨーロッパでノンスプリングのマットレスが主流になった歴史的経緯に関して、ご存知の方がいらっしゃったらご教示いただきたいところです(..)
さてノンスプリングのマットレスといえばその代表格は『ウレタン』と『ラテックス』
『ウレタン』は『石油』由来
『ラテックス』は『天然ゴム』由来
『ウレタン』と『天然ゴム』の廃棄方法に関して、全国の自治体がどう扱っているのか?インターネットでちょっと調べてみたところ、一部で『不燃ごみ』として扱っているところもありますが、ほとんどの自治体が『可燃ごみ』として扱っているようです。
とはいえ『ウレタン』や『天然ゴム』をご家庭では決して燃やさないでください。黄ばみがかった黒い煙が出てしまい、場合によっては消防が出動し、こっぴどく叱られるハメになるかもしれません。これらはきちんとした二次焼却のできる高温焼却炉で燃やす必要があります。
一般的なイメージで言うなれば、ウレタンって燃やすと有毒ガスが発生しそうなイメージがあるかもしれません。しかしながら当店で取り扱っている『フィットラボマットレス』の場合、製造メーカーである西川リビングによると、『燃やしてもダイオキシンなどの有害物質は一切発生しない』とのことです。(ただし、しつこいようですがご家庭では決して燃やさないようにお願いします)
さらに言えば、西川リビングは経費を負担してウレタンはもちろん、古ふとん全般を固形燃料としてリサイクルするシステムを(外注ではありますが)実施してくれています。ここらあたり製造メーカーとしての立派な社会的使命を果たしている一例だと思います。
あとラテックス(天然ゴム)に関しては、メーカーによると『土に埋めると、数年で土に還る』とのことです。『土(植物)からとれた物をそのまま土に還す』なんて究極のリサイクルではあります。しかしながら『じゃあ使い終わったら自分の家の庭に埋めよう』などと考える人は少ないのではないでしょうか。少なくとも私であれば自分の家の庭には埋めません(苦笑)結局『どこに埋めるの?』という問題が残るワケでして、焼却する・・・というのが現実的な対応になると思います。
さて、
いろいろと書いてきましたが、『金属スプリングマットレス』と『ノンスプリングマットレス』では、分別・廃棄にかかる手間・コストという観点において『ノンスプリングマットレス』に軍配が上がることは間違いないように思われます。
あともう一つ蛇足ながら・・・一般の方がベッドマットレスを廃棄する際に知っておいた方が良いポイントがあります。廃棄の際には当然のことながら処分場まで持ち込む必要があります。ノンスプリングマットレスの場合、屈曲性があるので、折り曲げることで、大きめのワゴン車などであれば載せることが可能です。
しかしながらスプリングのマットレスの場合、マットレス自体にに屈曲性がないので、ワゴン車などに載せることはまず不可能です。そのため軽トラなどで運ぶことになります。軽トラを所有しておられる一般家庭は少ないはずなので、わざわざどこかから借りてくる必要に迫られます。こういった点においてもノンスプリングマットレスに隠れた優位性があります。
6.スプリングマットレスにもっと工夫が必要なのでは?
そして近年、世の中のありとあらゆる工業製品において品質設計時に、廃棄のことまで配慮するのが当たり前の時代になりつつあります。
例えばペットボトル
ペットボトル部分(リサイクルごみ)と包装ラベル部分(不燃ごみ)とに分別しやすいように、ラベル部分にミシン目が入っています。(初期はこういう仕様になっていなかったと記憶しています)これもまさにメーカーが多少なりともコストを掛けてそういった仕様にしているのだと思います。
その他文房具などでも、例えば紙部分と金属部分などが分別しやすい仕様のものがかなり増えてきて、その作りの気配り具合に関心させられることもしばしばです。
金属スプリングのマットレスに関しても、いろいろなメーカーのホームページを拝見する限りでは、少しずつこういった取り組みがなされ始めている様子ですが、現状ではまだまだそういった仕様になっているものはごく一部であり、未だに廃棄の際の分別のことが考慮されていないものがほとんどです。この点他の業種・アイテムと比べて随分と遅れているように思います。
・側生地をファスナーによる脱着式にする
・中綿の止め金具を取り外し容易なものにする
・1個1個ポケットコイルを1個1個包んでいる不織布を何とかする
などの対応があれば、分別・廃棄はかなり簡易になると思います。
7.製造者、使用者そして販売者の社会的責任
当店に来られるお客様から『スプリングのマットレスとノンスプリングのマットレス、どちらが良いのですか?』という質問を受けることがあります。
その際、寝心地に関しては、スプリングマットレスとノンスプリングマットレスを単純に一般化して『良し悪し』を評論する事など出来ないことをまずお伝えします。(例えばA社の△△というスプリングマットレスと、B社の□□というノンスプリングマットレスの具体的比較であればもちろん可能です)
そしてここまで書いてきたような廃棄に関する『ノンスプリングマットレスの優位性』をきっちりとお伝えした上で、当店ではノンスプリングのベッドマットレスだけを取り扱っていることをお伝えしています。
もちろんベッドマットレス選びの一番大切な要素は『寝心地』であることは言うまでもありません。そしてもしかしたら『有名ブランド』であることを重視する人もいるかもしれません。
その点『(ご購入から十数年後の)廃棄・リサイクルのしやすさ』という要素に関しては、一般の方からすると、さほどに重視するべきポイントではないのかもしれません。そのため『ピンと来ない』『関係ない』と思われるかもしれませんが、かつて自分たちで分別をしていた経験からすると『こんなに分別・廃棄に手間の掛かるスプリングマットレスは時代遅れだ』・・・と感じています。
そのため是非とも『(ご購入から十数年後の)廃棄・リサイクルのしやすさ』という要素も考慮に入れて頂きたいと思います。工業製品の廃棄に関しては、製造メーカーの責任であるとともに、使用者の責任でもあるのですから。
そして最後に、このような地味~な話もきっちりとお伝えするのが、販売する者の社会的責任だと思っています。
↑快眠寝具専門店ふとんのせいぶ(西部製綿株式会社)HPへのリンク(外部リンク)↑
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